牡蠣フライ理論。

自分自身について書くのは不可能であっても、たとえば牡蠣フライについて原稿用紙四枚以内で書くことは可能ですよね。だったら牡蠣フライについて書かれてみてはいかがでしょうか。

これは、村上春樹さんが就活生の自己PR文について悩んでいる相談に対して答えた言葉「自己とは何か(あるいはおいしい牡蠣フライの食べ方)」より。突拍子もないが、その後こう続く。

あなたが牡蠣フライについて書くことで、そこにはあなたと牡蠣フライとのあいだの相関関係や距離感が、自動的に表現されることになります。それはすなわち、突き詰めていけば、あなた自身について書くことでもあります。それがいわゆる「牡蠣フライ理論」です。

加藤さんの処女作『ピンクとグレー』は一番「牡蠣フライ理論」が働いていると思う。渋谷を舞台にした芸能界の姿を描く。自分自身を確立するために、そしてあの2人を繋ぎ止めるために書いた作品を通して、私たちはアイドルであり等身大の人間加藤シゲアキを見つけ出すことができる。シゲアキさんの小説を読むことは、彼自身を知る旅である。
私が、アイドル、作家としてのシゲアキさんを信頼できる一番の部分が「こちらに結論を委ねてくれる」という所である。これは増田さんにも言えるのであるが*1、結論を用意せずに、仮説をいくつも言語化して提示してくれる(ただしこの言語化に関してはシゲマスは対照的)。オープンエンドな人物なのだ。全てあますことなく話してくれてそれを享受するもよし、反論するもよし。こんなスタンスのアイドルはなかなかいない。(ジャニーズという垣根を越えたところでいうと指原さんのスタンスは近いかもしれない)
だから私は、加藤さんを見るというよりも、加藤さんの文章から彼を拾い集める作業が大好きで、それに共感してしまうので担当ではないのであると思う。以前どこかでつぶやいた気がするが、加藤さんはLIKEで増田さんはLOVEなんだ。
LIKEは通じるものがある安心する好き。LOVEは自分とは異なるものに気になって歩み寄ろうとする好き。
どちらも大事だし、この双方に値する人物がグループ内に存在するから私はNEWSが好きなんだろうなと思う。

また、新たな作品を世に出してくれる度に、ひとつ、またひとつと、私は加藤シゲアキさんを知ることができるのだ。世の中って素晴らしい。加藤シゲアキさんありがとう。あなたの表現する世界に全幅の信頼を寄せています。心から。28歳輝いて下さい。

*1:前回エントリーにて