遠くまで旅する部屋 〜書くことの意味〜

閃光スクランブルの文庫本が発売され、やっと購入できました。11月25日初版発行の文字にじわじわと嬉しさを感じます。私の中で、この作品がシゲアキさんの書いた小説の中で一番のお気に入りで宝物です。最高のフィクションでハッピーエンドだったと思っています。
文庫本を手に取った今、まだ本文は読めていませんが、あとがきを読んで少しおしゃべりします。
あとがきにはまず、ピンクとグレーのお話から。

一人ではどうにもならない不甲斐なさや無力さに絶望しながらも…… ―加藤シゲアキ閃光スクランブル」文庫本あとがき

奇しくもピンクとグレーのコピーは絶望的に素晴らしいこの世界に僕は君と共にあるでした。シゲアキさんは芸能界という場所を絶望的に素晴らしいと表現する。そこに私達の知らない彼らの世界、そして当時の心境が現れていたんだなと改めて感じて胸が苦しくなりました。シゲアキさんの苦しくも美しい気持ちが全て詰まっていたのがピンクとグレーでした。堅くて混沌としていて彼曰く薄暗い雨雲のような小説。でもその中で生きている二人はみずみずしく輝いている青春小説です。(裕翔くんと菅田くんでの銀幕楽しみ)
……ちょっと、話が脱線しました。

そして、本題の閃光スクランブルについて。
この作品を執筆しているシゲアキさんはちょうど4人での活動が始動し、自分達に何ができるかと新規開拓してもがいていた時だったとのこと。自分に向かって書いた台詞もあると。随所でジャコランタン (Jack-o'-Lantern)が亜希子に話をするところもかな。
そこで、あとがきでシゲアキさんがぽろぽろっと書いて下さっているんです。

自分は『閃光スクランブル』を書いて救われました。 ―加藤シゲアキ閃光スクランブル」文庫本あとがき

ここで、運命なのか。私の手許にこの文庫本と共に買った村上春樹さんの「雑文集」があり、目次から絶対にあるはずだという項目を探しました。"小説を書くということ"という部分。あったあった。"遠くまで旅する部屋"という一節に目を留めました。

物語を作るというのは、自分の部屋を作ることに似ています。部屋をこしらえて、そこに人を呼び、座り心地のいい椅子に座らせ、おいしい飲み物を出し、その場所を相手にすっかり気に入らせてしまう。(中略)というと、まるでこちらが一方的にサービスしているみたいに聞こえるかもしれないけれど、必ずしもそういうわけではありません。相手がその部屋を気に入り、それを自然に受け入れてくれることで、僕自身も救われることになります。 ―村上春樹村上春樹 雑文集』「遠くまで旅する部屋」

そしてある日、僕は小説を書こうと思いました。(中略)人を感心させるようなものを書こうとも思いませんでした。ただ自分にとって落ちつける、居心地のよい場所をそこに作り上げたかったのです。自分を救うために。そしてそれが他の人にとっても落ちつける、居心地のよい場所になればいいと思いました。 ―村上春樹村上春樹 雑文集』「遠くまで旅する部屋」

私たちはシゲアキさんの頭の中を垣間見て、そしてシゲアキさんが自ら紡いで救われた言葉たちを読んで救われて、居心地のよい場所をもらっているんだ。と思った時に、嗚呼この人どこまでもアイドルだなあと涙が出ました。

さて、週末久しぶりに時間が出来そうなのでゆっくりと閃光スクランブル読んでいきたいと思います。