いつも見ているこの景色 胸の中には物語

この人の内に秘めているであろう物語が垣間見える時が好きだ。
溢れる思いを上を向いて歌声にのせて届ける姿が好きだ。顎をくいっとあげて見つめる先にはほんの少し先の未来の物語が見えているはず。たまにその片鱗が姿を現したりちょっとこぼれ落ちたりするのを拾ってつなげて私は物語を作る。
ブラウン管やラジオでおちゃらけていると思いきや、雑誌でふとした一言に釘付けになる時がある。語彙が少ないというけれども、独特の感性から紡ぎ出される言葉は時に一番むき出しの真摯な思いをのせてくる。コロコロ変わっていく表情と同じく、どこまでがアイドルでどこまでが人間増田貴久なのかつかめないのも面白い。歌を歌う時も、その時その時で役者のように使い分ける声にどれが素なのか分からない。こんなにもミステリアスな人を私は知らない。分からないから知りたいし、いつまでも終わりがない物語であるが故に彼を見ることを辞めることができない。悩ましい限りである。
ニコニコふわふわきらきらしている「まっすー」も、
流し目でささやくかすれた歌声の色っぽい「増田」さんも、
口が悪くて足癖悪くてゴリラ顔で爆笑する「貴久」さんも、
すべて「アイドル増田貴久」そのものだ。
だからどうか、ずっと胸の中に物語を秘めながらずっと笑って歌ってガシガシ踊っていて欲しい。リズムを刻んで揺れながらマイクを持って歌うアイドルであって欲しい。