残された音や言葉を。〈1〉

ダ・ヴィンチ8月号 2004ー2014フジファブリックインタビューを読みました。この特集があったので買いました。にわかですが、あまりに清かったので記憶にとどめるために。


ある日、4人だったバンドが3人になった。曲を作り歌詞を書くことは手分けすればできるかもしれない。だが、歌う人がいなかった。インストバンドになってしまえば、自分たちが作った音楽が、”彼”が残した言葉が過去に封印されてしまう。

私が知っていたフジファブリックは「若者のすべて」に集約されていた。というよりも当時はそれ以外は知らなかった。ただ、穏やかな比較的単調なメロディーに乗せてひとりぼっちな心許ないような今にも消えてしまいそうな若者の声で切実に語られていて、私の心にいつまでも住みつく音楽だった。

実際にボーカルとギターを担当している山内さんもこんなふうに。


『若者のすべて』の歌詞は辿り着きたい目標のひとつ

やっぱり"彼"の言葉は特別だったし、それにさらに命を吹き込む声は唯一無二の存在だった。"彼"がいなくなってしまってから、彼等が出した結論は、3人でやっていこうということ。


フジファブリックだけの音や言葉を失くしたくない」って。だから3人でやっていこうと決めた

その後に発表されたアルバム『STAR』の表題曲


君の声はこだましてる

頭の中離れないよ

巡る思いは置いといて

さあ行きますか、

救われる歌詞だなあとしみじみ思う。忘れたくないから覚えたまんまで一緒に進むよという、"彼"に対する特別な言葉。一瞬ツーンとしてでも浮かぶのはエネルギー溢れる銀河系の宇宙。

他の曲も端々に面影がひょっこり顔を出しているようで、ノスタルジックさを感じさせるフジファブリックだった。


今でもバンドメンバーとして、

僕らの近くにずっと存在している。

僕らがこのバンドを続けているからこそ、

彼の存在を感じられると思う

残された音や言葉を新たに紡ぎ出していって物語は続いていく。

飄々とそよ風ような優しい志村さんの歌声と、芽吹いた緑のようにみずみずしく澄んだ山内さんの歌声はどちらも清く美しくフジファブリックであり続ける。

→もうちょっと次に続きます。