ピンクとグレー感想文。

続いて、やっと本の感想。おそらく高校の読書感想文以来に小説に付箋貼って、気に入った本文ワードに打ち込んでそれにコメント書き込んでという、現代っ子な感想文の書き方をしている自分が痛すぎるなと思いながらも、それだけする価値がある小説でした。以下感想を。がっつりネタバレです。そして限りなく長いです。
最近はいろんな雑誌で彼の作品についての感想や、さまざまなファンの方のブログにて感想も読んでいたんですけど、私は全く作品中にあるシゲアキさんの面影を排除した上で、ぶつぶつと語っていこうかと。
唯一シゲアキさんらしいなーと思ったのはこの一文のみでした。
ごぼうと蓮根と鶏肉の炒め物が出てきて、どうやら麺つゆでさぼったであろう味つけだった。
― 第五章 ミネラルウォーター

ここが唯一自分も料理をしてなかなかうるさそうなシゲアキさんの一面が私には垣間見えた場所。彼のお嫁さんになるには、スパルタ花嫁修業が必要だと痛感する程の一文w
冒頭にて、りばちゃんの独白において話が始まるというストーリー。冒頭の文章の硬さは、りばちゃん自身がつづったというリアリティを出すためかなと。後で思ったり。合間合間に挟む回想シーンは映画のワンシーンを切り取って貼り付けた感じを受ける。言葉で質感までも表現しようという気概が見え、それが後半さらに鮮やかになる。静かな狂気が垣間見える文体。しかし、その中にもきゅんとするフレーズやベタな展開もあってその安っぽさが逆にいい。また、情景描写を鮮明に描くのと正反対に主人公以外の人物の心情描写が極端に少ないため、行動や言動の中から自分なりに、登場人物の心情を想像するのが楽しい。とにかく、個人的に私は好きな作品。人間としてはりばちゃんが好きだけど、分析するのは俄然気持ちがあまり見えないごっちが楽しい。
全体はこういう感じ。ちなみに、私が一等好きな部分がここ。
横からはだらだら流れる涙と激しい泣き声が聞こえる。彼の涙が不足しないように、僕は自分の分も彼の涙に混ぜた。  ― 第七章 24歳 缶のコーンスープ
りばちゃんの無言だけど、彼のことを思って隣にそっとたたずむ、子どもであって達観したようなそれでいてどこまでも純粋なごっちに対する「すき」が詰まっている一文。
あとこれも純粋にうわーすごいわ、って思った箇所。
「同情するよ、そんな世界で売れちまったことに」少し皮肉を言った。そこには幾ばくか嫉妬も混じっている。そして直後に、この五年間で溜まっていた複雑で不快な感情はするすると解け、残ったのは憐れみだった。痛々しく弱った彼は、かつて僕の憧れていたごっちではなかった。 ― 第十章 25歳 チャイナブルー、バーボンソーダ、スノーボール、スコッチ
ここまでの文章の中で、嫉妬に値する言葉はあったけど、はっきりと「嫉妬」って言葉にした瞬間にその気持ちが昇華される。その表現に脱帽。おそらくこれ以前に嫉妬という言葉を敢えて使っていないと思う。…なかったよね?あったら教えてくださいw
私自身女なので、男同士の友情ってどんなもんか知らないけど、彼らの関係は男性には共感する所とかあるのかな?前回のエントリーの題名のような「すき」という感情。それに近いのは小説でいうと、あさのあつこさんが描く少年たちに近いのかなって。同性愛に限りなく近いけど、最後がそこに終着しないという。どこまでもお互いがそれこそ恋愛で片付けられない程大事ですき。MANZAI然り、NO.6然り、ピングレ然り。不思議だよね。しかも、どこまでもお互いがそう思っているかというと、そうじゃないんだろうな。りばちゃんはこの「すき」でごっちは限りなく自分を形成する人格の一部としてりばちゃんが存在してて。りばちゃんがいないと駄目っていう依存型タイプ。まさにそれが本文でいうオニアンコウという比喩であり、りばちゃんがメスでごっちがオス。表現が独特。自我の喪失に悩まされて彼の中に自分を見いだして、彼に託して死んでいく。…こう書いたら極悪人みたいになったwちょっといらっとするタイプwでも、憎めなくて小さい頃からつかみ所がなくて、飄々としてて、ほっといたらどっかいきそうな切ない存在。おそらく、それをりばちゃんは何となく気づいてて、親友としてそばにいて、そしてサリーは恋人としてそばにいることを決意したんだろうなという。私の中でりばちゃんとサリーは成分が似てるなと。
「男?女?」「じゃあ、男」 ― 第三章 25歳 シングルモルトウィスキー
男女の関係性について曖昧な本作品だけど、作品の各所にこの言葉が登場する。それは、二人の関係性や彼等をとりまく男女の関係。淡白なようでそうではない。特にスタンドバイミーの三人は男二人に女一人として再会することで、関係変わってしまう必然性とか。結構大事な一節なきがする。
でも、最後にごっちはりばちゃんを選んだところにこの話の根幹にある「すき」が溢れてる。
そして、「ファレノプシス胡蝶蘭花言葉は、幸福の飛来、幸福が飛んでくる、あなたを愛します。花の学名が好きだといい、この歌詞を書く際に、胡蝶蘭にした理由はなんだったのかなーといろいろ考えて、この花言葉も関係してそうだなと思ったり。学名知ってるくらいだしね。でも一番気になるのは27歳と139日後の意味。これは今の段階で私は分からなかった。。また読み直さないとな。
アイドルシゲアキさんが、作ったという面から考えたら、なんで本人が苦手なラ行を多用するんだろうと思うんですがw彼舌足らずで歌うイメージがあってwでもシャララタンバリンもラ多いしw
分からないといえば、最後の章だけ飲み物じゃなくて果物なんだけど、それはただ単に題名にかけただけなのか、それともまた違う意味があるのか。しかし、どの章でもその飲み物が出てきてるんだけど、ピンクグレープフルーツだけは出てこない。そこが気になる所です。
いまんところこれくらい。。また読み直していろいろ追記するかもしれませんが、如何せんシゲアキさんの影響を受けている作品は観てないので、近い将来それを観たらまた変わるんだろうなと思います。今この作品を読んで、作品に対するスタンスというか、人間的に恩田陸さんに近いかなと。オマージュや映画好き、本好き、舞台好き。将来的にシゲアキさんのそれらのジャンルによるエッセイとか読みたい。
とりあえず、そう思ったピングレ感想文でした。